近年、新聞を賑わしている児童虐待、親の生き別れや死別、生活苦等の理由によって、児童養護施設や里親に預けられている子ども達が、3万人以上もいることをご存知でしょうか。
日本国憲法の児童福祉法は0歳~18歳までが、この子ども達の生活と就学を援助することになっています。大学に行く場合は20歳までです。
しかし、18歳を過ぎてしまうと原則的に全ての援助措置は打ち切られる事になります。各施設や里親の善意にも限りがある中で、18歳以上になった子や高校を中退した子ども達は、どうやって生活基盤を作っていけるでしょう。
せめて、全ての子ども達に20歳までの措置の延長を多くの関係者や団体が願っていますが、10年を過ぎた今でも実現していません。
そこで 、困難な状況に陥った子どもをみかねた私達が『子ども達の人生の可能性を少しでも広げたい』という思いを込めて、「アニー基金」を立ち上げました。
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◆「アニー基金」設立のきっかけ
里親の我家で育った男の子が高校卒業を迎えた時、行政から20万円程度の補助金が出るだけで、社会に放り出されるという現実を知りました。何の後ろ盾もない18歳の子は住む所もなく住み込みの仕事を探すしかない。運転免許を取るお金もない。これでは職が選べません。免許取得や部屋代などの資金を援助することで自立の手助けをしたいと考えました。
社会福祉協議会が安い利息で、お金を貸出しますが、保証人が実親でないといけなかったり、利息を計算して返済が済むまで民生委員が出入りするという内容で、アニー基金とは違う形をとっています。「借りていく子ども達は、どう思うのか」を、よく考えていない行政の方法です。アニー基金の利益無し・保証人なしの判断は、子ども達のための親心です。
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◆NPO法人
寄付金を集めて運営する基金としては、社会的信用を得ることが大切です。そのためにNPO法人格が必要だと考えましたが、無利子でお金を貸すのはNPOの主旨に合わないと言われました。未成年相手の金貸し業ではないかと。借りると返済義務が生じます。毎月いくら、何年で返すという契約ですから、貸している間、その子に関わり続けます。そして、『返済を通して自立を支援』していくのです。ここをわかってもらうのに時間がかかりましたが、逆に多くの理解を得ることができました。
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◆活動を通して伝えたいこと
最近は虐待する親と一緒に住んでいるより、離した方が子どもにとって幸せだと言われます。確かにそうですが、親と離れた子どもがその後どうなるのか、養護施設の実態を知っている方は少ないです。施設では衣食住は保障されますが、心のケアまでは十分ではありません。「アニー基金」の活動を通して、施設の子ども達にも目を向けてほしいと願います。
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◆子ども達に伝えていること
契約なので印鑑を押す前に、ちゃんと契約書を読んでもらい収入印紙も用意してもらいます。社会に出る第一歩をしっかり教えていこうと思っています。「お金を返してもらうために、どこまででも追いかけて行くよ」と言って。『支援のエールを贈っています』。
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◆今後の課題
将来的にはどの都道府県でもこの制度はあるべきだと思います。進学する際の補助金なども、自治体によって子どもへの対応がまちまちで不公平です。沢山の子に貸したいけれど資金がなければできません。1口で2,000円の会費は大口の寄付でなくても、細く長くつながってくれる理解者・支援者に集まってほしいと願っています。